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【研究室紹介】 一瀬研究室

モノアミン・ビオプテリンによる高次脳機能の調節機構の解明

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2017.02.09

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、モノアミン神経伝達物質による脳機能の調節機構や、ビオプテリンの生理作用の研究を通じて、疾患の診断や治療・健康増進につながる研究を目指す、一瀬研究室です。

教授 一瀬宏

生命理工学コース
教授 一瀬宏別窓

キーワード ドーパミン、ビオプテリン、パーキンソン病、情動
Webサイト 一瀬研究室別窓

研究紹介

ヒトの性格はさまざまです。

性格の違いは脳内のどのような違いにより形成されるのでしょうか。

脳内の重要な神経伝達物質であるモノアミン類は、情動に深く関わっています。

Cloningerという人は、次のような性格傾向とモノアミンとが相関しているという説を唱えています。

  • 新規追求 Novelty seeking―ドーパミン
  • 損害回避 Harm avoidance―セロトニン
  • 報酬依存 Reward dependence―ノルアドレナリン

一瀬研究室では、ドーパミンやセロトニンを神経伝達物質とするモノアミンニューロンを中心として、モノアミンニューロンによる脳高次機能の調節機構、脳の発達とモノアミンニューロンの関連について研究しています。

  • 脳内モノアミンの生合成はどのようにして制御されているのでしょうか?
  • モノアミンニューロンの活動変化が、性格や情動・行動にどのように影響しているのでしょうか?
  • 脳内モノアミンニューロンは、パーキンソン病、躁うつ病などの神経精神疾患の病態と深く関連しています。モノアミンニューロンの機能と病態はどのように結びついているのでしょうか?
  • ビオプテリンは、モノアミン生合成酵素の補酵素です。ビオプテリンは、生体内でどのように代謝され、どのようにモノアミン生合成量の調節に関わっているのでしょうか?

上記のようなテーマにアプローチするために生化学・分子生物学の手法を中心として、培養細胞や遺伝子導入動物などを用いて分子レベルから細胞、個体レベルまでの解析を行っています。

また、遺伝子改変動物で脳内アミンの量を人為的に変化させたとき、動物にどのような変化が現れるか。

パーキンソン病などの神経精神疾患の発症機構を明らかにして、新しい治療法の開発へと結びつけていきたいと考えています。

パーキンソン病などの神経精神疾患の発症機構を明らかにして、新しい治療法の開発へと結びつけていきたいと考えています

研究成果

代表論文

  • [1] Ishikawa T, Imamura K, Kondo T, Koshiba Y, Hara S, Ichinose H, Furujo M, Kinoshita M, Sawada H, Takahashi J, Takahashi R, Inoue H. Genetic and pharmacological correction of aberrant dopamine synthesis using patient iPSCs with BH4 metabolism disorders. Hum Mol Genet, (in press)
  • [2] Kawahata I, Ohtaku S, Tomioka Y, Ichinose H, Yamakuni T. (2015) Dopamine or biopterin deficiency potentiates phosphorylation at Ser and ubiquitination of tyrosine hydroxylase to be degraded by the ubiquitin proteasome system. Biochem Biophys Res Commun 465: 53-58.
  • [3] Xu F, Sudo Y, Sanechika S, Yamashita J, Shimaguchi S, Honda SI, Sumi-Ichinose C, Mori-Kojima M, Nakata R, Furuta T, Sakurai M, Sugimoto M, Soga T, Kondo K, Ichinose H (2014) Disturbed biopterin and folate metabolism in the Qdpr-deficient mouse. FEBS Lett 588: 3924-3931
  • [4] Liang Y, Inagaki H, Hao Q, Sakamoto M, Ohye T, Suzuki T, Ichinose H (2013) Identification of an enhancer region for immune activation in the human GTP cyclohydrolase I gene. Biochem Biophys Res Commun 442: 72-78
  • [5] Homma D, Katoh S, Tokuoka H, Ichinose H (2013) The role of tetrahydrobiopterin and catecholamines in the developmental regulation of tyrosine hydroxylase level in the brain. J Neurochem 126: 70-81
  • [6] Toda T, Homma D, Tokuoka H, Hayakawa I, Sugimoto Y, Ichinose H, Kawasaki H (2013) Birth regulates the initiation of sensory map formation through serotonin signaling. Dev Cell 27: 32-46
  • [7] Tokuoka H, Muramatsu S, Sumi-Ichinose C, Sakane H, Kojima M, Aso Y, Nomura T, Metzger D, Ichinose H (2011) Compensatory regulation of dopamine after ablation of the tyrosine hydroxylase gene in the nigrostriatal projection. J Biol Chem 286: 43549-43558
  • [8] Koshiba S, Tokuoka H, Yokoyama T, Horiuchi E, Ichinose H, Hasegawa K (2011) Biopterin levels in the cerebrospinal fluid of patients with PARK8 (I2020T). J Neural Transm 118: 899-903
  • [9] Homma D, Sumi-Ichinose C, Tokuoka H, Ikemoto K, Nomura T, Kondo K, Katoh S, Ichinose H (2011) Partial biopterin deficiency disturbs postnatal development of the dopaminergic system in the brain. J Biol Chem 286: 1445-1452
  • [10] Kadkhodaei B, Ito T, Joodmardi E, Mattsson B, Rouillard C, Carta M, Muramatsu S, Sumi-Ichinose C, Nomura T, Metzger D, Chambon P, Lindqvist E, Larsson NG, Olson L, Bjorklund A, Ichinose H, Perlmann T (2009) Nurr1 is required for maintenance of maturing and adult midbrain dopamine neurons. J Neurosci 29: 15923-15932
  • [11] Sato K, Sumi-Ichinose C, Kaji R, Ikemoto K, Nomura T, Nagatsu I, Ichinose H, Ito M, Sako W, Nagahiro S, Graybiel AM, Goto S (2008) Differential involvement of striosome and matrix dopamine systems in a transgenic model of dopa-responsive dystonia. Proc Natl Acad Sci USA 105: 12551-12556
  • [12] Suzuki T, Yamakuni T, Hagiwara M, Ichinose H (2002) Identification of ATF-2 as a transcriptional regulator for the tyrosine hydroxylase gene. J Biol Chem 277: 40768-40774
  • [13] Sumi-Ichinose C, Urano F, Kuroda R, Ohye T, Kojima M, Tazawa M, Shiraishi H, Hagino Y, Nagatsu T, Nomura T, Ichinose H (2001) Catecholamines and serotonin are differently regulated by tetrahydrobiopterin: a study from 6-pyruvoyltetrahydropterin synthase knockout mice. J Biol Chem 276: 41150-41160

教員紹介

一瀬宏 教授 医学博士・理学博士

東京工業大学理学部化学科卒業後、同大学総合理工学研究科生命化学専攻に進む。

当時の指導教員だった永津俊治先生が東工大から名古屋大学医学部生化学第一講座に異動したことに伴い、名古屋大学大学院医学研究科に入学し1989年に医学博士号を取得。

学位取得後、名古屋大学医学部、藤田保健衛生大学総合医科学研究所に勤務し、ドーパミン生合成酵素、および、ビオプテリン生合成酵素に関する生化学・分子生物学的研究を続ける。

その間、1994年11月から1年半フランスStrasbourgの研究所に留学し、核内受容体による転写調節の研究を行う。

2003年1月より東工大に勤務し、現在に至る。

2013年日本ビタミン学会賞受賞

教員からのメッセージ

一瀬教授より

生命科学の研究では、いろいろな実験や観察を通じて自然の神秘、生命の不思議を解き明かすことを目的としています。

1個の細胞の中には、まだ私たちの知らない世界が果てしなく広がっています。

デカルトは「我思う故に我あり」といいました。

では、私たちはどのようにして「思う」ことができるのでしょうか。

今なお私たちには答えることができません。

実験や観察を通じて、自然のベールを解き明かしていくことは、研究者のみが味わえる醍醐味です。

地味な研究生活ですが,その成果は医療や健康増進に役立つものとなります。

あなたも生命の神秘に挑んでみませんか。

お問い合わせ先

教授 一瀬宏
すずかけ台キャンパスB2棟 820号室
E-mail : hichinos@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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