生体システム専攻
STAFF
教授 : 岡田 典弘
講師 : 梶川 正樹
助教 : 二階堂 雅人
助教 : 西原 秀典
特任助教 : 寺井 洋平
研究員 : 2名
D3 : 9名、D2 : 1名
M2 : 3名、M1 : 4名
B4 : 3名

研究内容紹介
- 1. 種の分化と形成の分子機構
生物の多様性は種の分化と形成を繰り返して獲得されてきたと考えられている。そしてこの機構には適応と生殖的隔離が必須である。我々の研究室では種の分化と形成の機構を分子レベルで明らかにするため、アフリカのヴィクトリア湖に生息するシクリッドという魚を研究対象に用いている。
アフリカ大陸の大地溝帯に位置するヴィクトリア湖にはこの湖固有のシクリッドが500種程生息しており、形態的・生態的に著しく多様化している。この湖は1万数千年前に最後に干上がったことが報告されており、現存のシクリッドの種は湖が再び形成してからの短期間に種分化して出現したと考えられている。そのため種間が遺伝的に極めて近縁であり種の分化と形成を起こしたばかり、もしくはその最中が現在観察でき、この研究に最適な生物である。最近の我々の研究で視覚の適応が種の分化を引き起こしてきたことが明らかになったので簡単に紹介する。
透明度の異なる岩場に生息する種の研究と、生息する深さが異なる種の研究により次のことが明らかになった。
- 始めにシクリッドが生息する光環境に視覚を適応させてきた。水の中は水の濁りや水質、深さによって大きく光の成分が異なり、その光の成分を効率よく受容できるようにそれぞれの種の視覚が適応している。
- 次にオスの婚姻色が適応した視覚に感度良く受容される色に進化してきた。視覚と婚姻色が分化した後にはお互いの個体の見え方が目立たないようになり、認識が弱くなる。それにより交配することがなくなり、種分化が起きる。
このような種の分化の機構は視覚などの感覚器により引き起こされることからSensory driveと呼ばれている。我々の研究は種の分化と形成を分子レベルで示した初めての例である。

- 2. レトロポゾンの増幅機構研究

真核生物のゲノムには多数のレトロポゾンが存在している。レトロポゾンとは、転写産物RNAの逆転写反応により自身のコピー数を増やす、転移性因子の一種である(右図)。真核生物ゲノムの少なからざる割合(人の場合は40%以上)は、レトロポゾンそのものにより占められている。また、レトロポゾンは真核生物ゲノムの単なる構成要素としてのみならず、ゲノムの複雑さやその進化に大きな影響を及ぼしていると考えられている。このように大量のレトロポゾンはいかにして蓄積され、またその増大は真核生物ゲノムにどのような影響を及ぼしているのであろうか?
現在私たちはLINEおよびSINEとよばれるレトロポゾンの増幅機構を解明することを目的として研究を進めている。近年我々は、LINE増幅に宿主生物のコードするDNA修復系因子が関わることを発見した。レトロポゾンの増幅機構解明は、我々真核生物のゲノムDNAがどのように形作られたのか、その進化・成り立ちを理解する上で重要な知見をもたらすであろう。
- 3. 哺乳類進化に関与したSINEの解析
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ゲノム中にはタンパク質コード領域以外にも種間で保存された領域が多数存在するが、多くは機能が未解明である。当研究室では以前、哺乳類の保存領域内に存在するSINEを多数発見した。このことは一般に機能を持たないSINEが進化の過程で何らかの機能を獲得し、哺乳類進化に影響を及ぼした可能性を示唆している。
当研究室では保存領域内のSINEの機能解析をおこない、SINEが具体的にどのような機能を獲得し、どのように哺乳類進化に貢献したのかを研究している。例えば、あるSINE(AS071)は間脳で発現するFgf8遺伝子のエンハンサーであり(右図)、哺乳類特異的な脳構造の形成に関与することを証明した。また別のSINE(AS021)は哺乳類で大きく発達した終脳においてSatb2発現を誘導するエンハンサーである可能性を示した。これらのSINEは哺乳類の共通祖先でエンハンサー機能を獲得し、哺乳類特有の脳構造の進化に関与してきたと考えられる。こうした機能解析により、今後もSINEを介した哺乳類進化の分子メカニズムの解明が期待される。
最近の論文
- Seehausen O., Terai Y., Magalhaes I.S., Carleton K. L., Mrosso H.D.J., Miyagi R., van der Sluijs I., Schneider M.V., Maan M., Tachida H., Imai H.Okada N.Speciation through sensory drive in cichlid fish.Nature(article)455, 620-626(2008)
- Sasaki T., Nishihara H., Hirakawa M., Fujimura K., Tanaka M., Kokubo N., Kimura-Yoshida C., Matsuo I., Sumiyama K., Saitou N.,Shimogori T.and Okada N.Possible involvement of SINEs in mammalian-specific brain formation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 105, 4220-4225(2008)
- Nishihara H, Hasegawa M, Okada N.Pegasoferae, an unexpected mammalian clade revealed by tracking ancient retroposon insertions. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 103,9929-9934(2006)
- Sugawara T., Terai Y., Imai H., Turner G.F., Koblmuller S., Sturmbauer C., Shichida Y.and Okada N. Parallelism of amino acid changes at the RH1 affecting spectral sensitivity among deep-water cichlids from Lakes Tanganyika and Malawi. Proc. Natl.Acad. Sci. USA 102,5448-5453(2005)
- Kajikawa M, and Okada N.LINEs Mobilize SINEs in the Eel through a Shared 3' Sequence. Cell 111,433-444(2002)
- Shimamura M., Yasue H., Ohshima K.,Abe H., Kato H., Kishiro T., Goto M., Munechika I, and Okada N. Molecular evidence that whales form a clade within even-toed ungulates. Nature 388,666-670(1997)
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