生命理工学系 News

【研究室紹介】 村上研究室

蛋白質など生体高分子の機能解明をめざし原子レベル構造を観察

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2017.05.08

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、膜タンパク質複合体などの原子レベルでの立体構造をX線結晶構造解析などの手法により観察し、 作動機構を構造に基づき本質的に明らかにする、村上研究室です。

教授 村上聡

生命理工学コース
教授 村上聡別窓

キーワード 構造生物学、蛋白質科学、X線結晶構造解析、細胞膜
Webサイト 村上研究室別窓

研究紹介

X線結晶構造解析

私たちの研究は原子レベルの解像度でタンパク質の立体構造を明らかにし、その構造を基に分子の機能解明を目指しています。

蛋白質、とりわけ膜蛋白質の立体構造解析ではX線結晶構造解析が最も有力な方法のひとつです。膜蛋白質は精製や結晶化がとても難しいことが知られていますが、私たちは効率の良い精製方法や、新しい結晶化法など、結晶構造解析が困難なこれらのターゲットに挑むための技術開発も行っています。

膜蛋白質の構造生物学

細胞膜は細胞にとって単なる囲いや透過障壁であるばかりでなく、物質や情報のやりとりの関所でもあり、多くの蛋白質がそこに存在し、それらは生理的に重要な役割を果たしています。

私たちの研究室では膜蛋白質を中心に、生体内で重要な働きを持つ蛋白質の立体構造解析を通してその機能を本質的に理解しようとする膜蛋白構造生物学を展開しています。膜蛋白質の立体構造解析は技術的に非常に困難な分野であることが知られていますが、私たちは果敢に挑戦を続けています。

これまでに結晶構造を明らかにした膜蛋白質の例

これまでに結晶構造を明らかにした膜蛋白質の例

研究成果

代表論文

  • [1] Water-mediated recognition of simple alkyl chains by heart-type fatty-acid-binding protein. S. Matsuoka, S. Sugiyama, D. Matsuoka, M. Hirose, S. Lethu, H. Ano, T. Hara, O. Ichihara, S.Kimura, S. Murakami, H. Ishida, E. Mizohata, T. Inoue and M. Murata, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 54, 1508-11 (2015)
  • [2] Drug uptake pathways of multidrug transporter AcrB studied by molecular simulations and site-directed mutagenesis experiments. X-Q. Yao, N. Kimura, S. Murakami, S. Takada, J. Am. Chem. Soc., 135, 7474-85 (2013)
  • [3] Growth of protein crystals in hydrogels prevents osmotic shock. S. Sugiyama, M. Maruyama, G. Sazaki, M. Hirose, H. Adachi, K. Takano, S. Murakami, T. Inoue, Y. Mori, H. Matsumura, J. Am. Chem. Soc., 134, 5786-5789 (2012)
  • [4] Drug export and allosteric coupling in a multidrug transporter revealed by molecular simulations. X-Q. Yao, H. Kenzaki, S. Murakami, S. Takada, Nat. Commun., 1, 117 (2010)
  • [5] Dynamic nature of disulphide bond formation catalysts revealed by crystal structures of DsbB. K. Inaba, S. Murakami, A. Nakagawa, H. Iida, M. Kinjo, K. Ito, M. Suzuki, EMBO J., 28. 779-791 (2009)
  • [6] Crystal structures of DsbB- DsbA complex revealing a Cysteine relocation mechanism. K. Inaba, S. Murakami, M. Suzuki, A. Nakagawa, E. Yamashita K. Okada, K. Ito, Cell 127, 789-801 (2006)
  • [7] Crystal structures of a multidrug transporter reveal a functionally rotating mechanism. S. Murakami, R. Nakashima, E. Yamashita, T. Matsumoto and A. Yamaguchi, Nature, 443, 173-179 (2006)
  • [8] Crystal structure of bacterial multidrug efflux transporter AcrB. S. Murakami, R. Nakashima, E. Yamashita and A. Yamaguchi, Nature, 419, 587-593 (2002)

教員紹介

村上聡 教授

1997年 大阪大学 大学院理学研究科 博士後期課程 修了
1997年 - 1998年 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー 博士研究員
1998年 - 2004年 大阪大学 産業科学研究所 助手
2002年 - 2006年 科学技術振興機構 さきがけ研究 研究者
2004年 - 2008年 大阪大学 産業科学研究所 准教授
2007年 - 2010年 英国ケンブリッジ大学 客員研究員
2008年より 現職
2005年 バイオビジネスコンペJAPAN 最優秀賞
2006年

日経BP技術賞 大賞

独創性を拓く先端技術大賞 特別賞(文部科学省 経済産業省 他)

モノづくり連携大賞 特別賞(日刊工業新聞社主催、NEDO共催)

2007年 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
専門
構造生物学、蛋白質結晶学
所属学会
日本生化学会、日本生物物理学会、日本蛋白質科学会、日本細菌学会、日本結晶学会、日本結晶成長学会、American Chemical Society

教員からのメッセージ

村上教授より

ターゲットを絞った膜蛋白質の結晶構造解析は大変興味深い研究分野ですが、南極探検に匹敵する厳しさがあると思います。以下に1914年に南極探検隊を募るために打たれた有名な募集広告を引用します。ブラックな内容ですが、夢や浪漫に惹かれた人が五千人以上も応募したそうです。

求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る。

~アーネスト・シャクルトン

以上引用

※ 当該研究分野が女子を拒むということを意味しません。あくまでも、そのまま文章を引用したなかの文言です。

お問い合わせ先

教授 村上聡
すずかけ台キャンパス J2棟 904号室
E-mail : murakami@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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