研究紹介

黒川 顕 教授
飛躍的に増加を続けるゲノム情報から新たな生物学的法則を見つけ出す 

微生物は、成層圏から地下数kmの岩盤まであらゆる環境に生息し、地球環境の創成にも関与しています。
多種多様な微生物が環境に生息していますが、ほんの少数のみが病原菌やヒトにとって有用な微生物として認識されています。
ほとんどの場合において、どんな機能をもったどんな微生物が生息環境において何をしているのかは不明のままです。

現在、生命に関する多様なデータが大量に得られるようになっています。
これらのデータは相互に、また複雑に連携していますが、その基盤となるのはゲノム情報です。
私たちは、ゲノム情報を核として、バイオインフォマティクスを駆使し多種多様な情報を結びつけることで、新たな生物学的知見を導こうとしています。

私たちの研究室では、
1. 微生物ゲノム解析:主に病原性細菌を対象としたゲノム解析および比較ゲノム解析により、病原因子の特定や進化に関する研究、
2. ヒトメタゲノム解析:細菌叢をまるごとゲノム解析するメタゲノム解析の手法により、腸内、口腔内や皮膚などの細菌叢とヒトとの関係の解明を目指す研究、
3. 環境メタゲノム解析:土壌や河川、海洋などの自然環境中に存在する細菌叢をメタゲノム解析し、環境中の遺伝子プールを明らかにし、遺伝子のダイナミクスの解明を目指す研究、
をテーマとして研究しています。


中島 信孝 准教授
微生物の言い分に耳を傾け、人間社会との調和を図る 

微生物は、土壌、水中、動植物の生体中など、地球上のあらゆる場所で生活しています。おそらく、微生物諸君にあっては現状の生活空間が快適な状態にあるのでしょう。しかし我々人間は、彼らのライフスタイルについて知らなさすぎます。例えば、彼らの多くが、多種類の微生物が密に相互作用しながら生活する「微生物群集」として存在しており、我々が実験室で単離培養できるものはたったの数パーセント程度だと言われています。また、水中に浮遊しているものも、何らかの支持体に固着しているものもありますが(後者の生活状態が大多数だとも言われます)、実験室内で行われる培養は専ら浮遊状態で行われ、固着性微生物の研究は大きく遅れています。

私はまず、微生物の群集としてのライフスタイルを知ることから研究を始めようとしています。身近な例では、台所の流し台にはヌメリのあるスライム状の構造体がよく現れますが、これはバイオフィルムと呼ばれる微生物群集が固着したものです。人間には忌み嫌われますが、彼らには彼らなりの理由があってそこに存在しているはずです。また、人間の体内にも無数の微生物が生活していますが、彼らもヒト細胞や他種微生物と共存することで快適な住環境を構築しているはずです。そして、これらの研究から得た知見を基に、不要な微生物(群集)を除去する技術や、体内の微生物群集を人為的に適正な状態に保つ技術を開発したいと考えています。

さらには、微生物群集から有用な遺伝子を多種多様な微生物から「発掘」し、培養が容易な微生物(大腸菌など)に移入することで、培養の可否にかかわりなくそれら遺伝子を利用可能にすることを目指します。これによって、地球上の遺伝子資源を使い尽くすことができるわけです。


土壌に住む多種多様な微生物は、観察はできても、単利培養ができないものが大多数


試験管にできたバイオフィルムとその形成機序。
身近なバイオフィルムの例として、歯のプラーク、台所のシンクのぬめりが挙げられる。


単離培養できない微生物でも、ゲノムDNAを取得して、培養が簡単な大腸菌に移入し研究することは容易。


山田 拓司 准教授
メタゲノミクス――腸内細菌叢代謝系の全容解明を目指す 

ヒトには1000種100兆個体を超える細菌が我々と共生しています。このような細菌群集は個人によってその構成が異なり、健康状態に影響を与えていることが明らかになってきました。山田研究室ではこのようヒト常在菌の群集構造解析を通して、ヒトとその常在菌がどのように影響を与えあっているかを明らかにすることを目指しています。

我々は情報科学と生命科学の融合領域であるバイオインフォマティクスの研究室であり、菌叢情報以外の膨大なデータ解析やその可視化にも力をいれています。代謝パスウェイの可視化、細胞分化の可視化やマッピングなども大きなテーマの一つです。

1. ヒトとその常在菌:

ヒトの皮膚上や腸内に共生する常在菌の研究は、メタゲノミクスという情報解析を基盤とした方法により飛躍的に進歩しました。メタゲノミクスとは、特定の環境中に含まれるDNA 配列を網羅的に解読し、そこで得られたDNA配列から、そこにどのような細菌がどの程度含まれているかを明らかにする手法です。そのような細菌群集のデータと、生活習慣、疾病情報などを組み合わせた超多次元データを基盤として、疾患に関わる因子の特定を目指しています。


2. 発酵に関わる微生物ゲノム:

日本における発酵食品を担う麹菌、乳酸菌に焦点をあて、それらのゲノム配列や遺伝子機能から、それらの菌が作る味噌や醤油、お酒などの味の違いを定量化することを試みています。各地方に特有の菌から作られた発酵食品が、地方固有の味や文化を作っている可能性があります。地域の食文化の特徴や歴史的背景を、ゲノム研究により定量化し明らかにすることを試みています。非常に挑戦的ですが、ゲノム研究を通じて日本の食に関わっています。


3. 大規模データビジュアライゼーション:

近年のサイエンスは大量のデータを生み出します。これまでのサイエンスではデータを出すまでが最も大事でしたが、現在ではその大量データを解析し、解釈するところも重要な側面です。その中でも、データを可視化し、これまで解釈が難しかった点をよりわかりやすくする試みが重要です。我々はこれでは、ヒト腸内環境の代謝経路を可視化した代謝マップの構築、代謝経路をより見やすく表現する可視化手法の開発など、大量のデータを一度に表現する方法の開発を続けています。



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