研究紹介

脊椎動物の進化の過程で新しく獲得され、形態を変化させてきた器官には様々なものがあります。私達は、特に鰭や四肢をモデルにして、形態を進化させる発生プログラムの変遷に着目して研究をしています。このように発生様式に着目した動物進化の研究分野を「進化発生学」とよび、サメ、メダカ、カエル、ニワトリなど、様々な種類の動物胚を使った研究を展開しています(図1)。

図1 ニワトリ胚への遺伝子導入。(a) 遺伝子導入をする機器。(b) ニワトリ胚の予定前肢芽領域へ、DNAを導入している様子。(c) 肢芽にEGFP発現コンストラクトを導入されたニワトリ胚。
図1 ニワトリ胚への遺伝子導入。(a) 遺伝子導入をする機器。(b) ニワトリ胚の予定前肢芽領域へ、DNAを導入している様子。(c) 肢芽にEGFP発現コンストラクトを導入されたニワトリ胚。

1. 鰭の獲得と四肢への進化

私達の祖先の原始脊索動物はナメクジのような形をしており、対になった鰭は持っていませんでした。ナメクジのような形の体に鰭が獲得されたのは、なぜなのか?鰭が四肢へと進化してきたのはどうしてなのか?ナメクジウオ胚やサメ胚を使って研究をしています(図2、図3)。

図2 サメの胸鰭原基では前側領域 (Alx4, Pax9) が広く、マウスの前肢芽では後側領域 (Hand2) が広い(Onimaru et al., 2015)。
図2 サメの胸鰭原基では前側領域 (Alx4, Pax9) が広く、マウスの前肢芽では後側領域 (Hand2) が広い(Onimaru et al., 2015)。

図3 サメの胸鰭原基の後側領域を人為的に広くすると、Tiktaalik(上陸したばかりの両生類)の胸鰭のように根元の骨が1つになる。鰭から四肢への進化の過程では、鰭が後側化することが重要だったのだろう(Onimaru et al., 2015)。
図3 サメの胸鰭原基の後側領域を人為的に広くすると、Tiktaalik(上陸したばかりの両生類)の胸鰭のように根元の骨が1つになる。鰭から四肢への進化の過程では、鰭が後側化することが重要だったのだろう(Onimaru et al., 2015)。

2. 肢芽の形成される区画の設定

四肢動物の手足は、正しい位置に形成されるように制御されていて、首や脇腹から手足が生えてはきません。私達は、脊椎動物の体壁の正しい位置に手足が形成される区画が設定されるために、どのような発生プログラムが働いているのかを調べています。

3. 腹鰭形成位置の多様化

真骨魚類の腹鰭は、その形態を多様に変化させているだけでなく、その形成位置を進化に伴い前側に少しずつずらしているという興味深い特徴があります。
腹鰭の形成位置や形態の多様化は、巨大な真骨魚類グループの生活圏や行動も多様にしたと考えられます。そこで私達は、真骨魚類の腹鰭の形成位置や形態の多様化をもたらした発生プログラムの変化を明らかにしようと取り組んでいます。

4. 四肢形態の多様化

脊椎動物の四肢の形態は非常にバラエティーに富んでいます。
私達は、四肢の指間の細胞死メカニズムなど(図4)、四肢の形態を多様にした分子基盤を理解することを目的とした研究に取り組んでいます。

図4 ニワトリの肢芽の指間領域で発現するMafB遺伝子は、BMPタンパク(*印は BMP のアンタゴニスト)に制御されている (Suda et al., 2014)。
図4 ニワトリの肢芽の指間領域で発現するMafB遺伝子は、BMPタンパク(*印は BMP のアンタゴニスト)に制御されている (Suda et al., 2014)。


ページ上部へ