研究紹介

なぜ地球にはこれほどまでにも多様な生物が存在しているのでしょうか?そして、なぜ私たちヒトは猿とつがいをつくったりしないのでしょうか?一見するとあたり前のようにすら感じてしまう、この生物多様性やそれを生み出す種分化のメカニズムを明らかにするのが進化学であり、本研究室のメインテーマでもあります。進化学は多様性の研究ですから扱う動物も多様性に富んでいます。主に高等脊椎動物を扱いながら、以下のようなテーマを進めています。

1.シクリッドの平行進化の分子メカニズム
東アフリカの大地溝帯に位置する三大湖、ビクトリア湖、マラウィ湖、タンガニィカ湖には形態的・生態的に多様なシクリッドが数百種を超えて生息し、「種分化」や「適応進化」の好例として知られています。そして、各湖のシクリッドはそれぞれが湖に固有な種であるにも関わらず、湖間において似た形質をもつ種が数多く存在しており、これは「平行進化」の好例であると言われています。私たちは、どの三大湖においてもかならず出現する「肥大化した唇」に着目し、その肥大化メカニズムを明らかにしたいと考えています。食性適応によって三大湖で独立に起きた「唇の肥大化」に、DNAレベルでの共通メカニズムが存在するのか、しないのか、ここが興味深いところです。

2.シクリッドのフェロモンと種分化の研究
同種の雄と雌が互いに惹きあうために、しばしばフェロモンが用いられます。シクリッドは体色が多様なため視覚による同種認知や種分化の研究が多く進められてきましたが、フェロモンに関してはその存在すら明らかになっていません。私達のグループは、シクリッドの嗅覚について研究を続けおり、特にフェロモンとその受容体がどのように進化し、ひいてはシクリッドにおける種の分化に貢献してきたのかを明らかにしていきたいと考えています。

3.哺乳類の平行進化の分子メカニズム
哺乳類の多様化プロセスの過程では、独立に何度も体毛が硬い棘もしくは針に進化しています(例えばハリネズミ、テンレック、トゲマウス、トゲネズミ、ヤマアラシ、ハリモグラなど)。つまり、「体毛の針化」というのは平行進化の好例ともいえます。特にハリネズミやテンレックにおける針内部の構造は縦横にリブが配置された極めて緻密なつくりで、これがいかなる発生過程を経て作り上げられるのかを明らかにするため研究を続けています。

4.脊椎動物に共通のフェロモン受容体の研究
フェロモンやその受容体というのは一般的に種間での多様性が大きく、それが異種間交雑を防ぎひいては種や生物の多様性の維持につながると考えられています。そして、その受容システムは祖先となる魚類が陸上化を達成した時点で大きく刷新されたことも知られています。しかし私たちは、古代魚(ポリプテルスやガー)から哺乳類までほぼ全ての脊椎動物に共通に存在する1コピーのフェロモン受容体候補遺伝子を発見しました。これは、脊椎動物の4億年以上に渡る進化の過程において単一のフェロモン受容体がずっと保持されてきたことを示唆し、極めて興味深いです。私たちはこの新規受容体がフェロモンを受容する神経細胞の根幹に関わる役割をしているのではないかと予想し、その機能を明らかにすべく研究を続けています。


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