研究紹介

太田 啓之 教授

地球上の多くの生命は、光合成を行う生物が生み出す酸素や炭水化物などの光合成産物を糧に生きています。
私たちの研究室では、光合成生物の中でも特に長い地球の歴史において酸素や光合成産物の供給に大きく貢献してきた「藻類」と、現在の陸上環境においてその役割を担っている「陸上植物」の2つの生物を取り上げ研究を行っています。
私たちは2つの観点から藻類に着目して研究しています。

まず1つは、陸上植物の祖先として。
現在陸上で生活しているあらゆる生命は、もともと水中で暮らしていた生物が陸地に上がったと考えられています。

我々のような動物が陸上で生活するためには、陸上に繁茂する植物の存在が必須です。
それでは陸上植物はどのようにして水中よりも過酷な陸上に進出することができたのでしょうか?
私たちはその進化の過程に着目し、陸上植物の祖先と言われる藻類を材料として、安定な水の中に暮らしていた藻類がどのように乾燥や凍結、強光など陸上のストレスに耐え、その細胞を守るための仕組みを獲得していったかを明らかにしようと研究しています。

また一方、陸上に進出した植物が、動けないが故に、如何にして陸上の過酷で多様な環境に適応しているのか? 私たちはそのヒントが細胞を形作る膜の成分にあると考え、その生体膜を介した環境適応の仕組みを明らかにしようと研究しています。

私たちが藻類に着目するもう一つの理由は、藻類が再生可能エネルギーや化学原材料として有用なオイル(油脂)を生産する高い能力を秘めているからです。
特に藻類や植物が作る油脂の生合成のしくみの解明や、それを基にした生産量や質の改変にも取り組んでいます。


下嶋 美恵 准教授

環境変動に応じて、植物の葉の脂質組成は大きく変化し、ストレスに適応しようとします。

たとえば、植物はリン欠乏にさらされると、細胞膜やミトコンドリア膜に存在するリン脂質の大半を糖脂質に転換し、膜中に蓄積されていたリンをより重要な生体内の代謝系に使用します。これは、リン欠乏に順応すべく植物がもっている膜脂質転換機構であることがこれまでの私たちの研究により明らかになっています。

ところが、最近の私たちの研究により、このような“環境ストレスと脂質転換”は、より多面的であることがわかってきました。例えば、リン欠乏時のシロイヌナズナの葉では、上記の膜脂質転換だけでなく、通常葉では微量にしか存在しない貯蔵脂質(油脂、トリアシルグリセロール)が顕著に蓄積します。この貯蔵脂質は、リン欠乏以外の環境ストレスでも蓄積することが知られていますが、その分子メカニズムとストレス耐性における生理的意義についてはまだわかっていません。また、私たちが近年報告した、リン欠乏時の膜脂質転換に関わる脂質生合成の変異体は、リン欠乏耐性は低下しますが、一方で乾燥ストレス耐性は向上することがわかっています。これらのことは、植物は環境ストレスにおいて巧妙に脂質転換を調節し、その環境に順応していることを示唆しています。

私たちのグループでは、上記に挙げたような様々な環境ストレス順応における脂質転換の生理的意義の全容解明を目指して研究を進め、将来的には多面的な環境ストレスに耐性を持つ植物の開発につなげられたらと考えています。


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