パブリケーション

2014.9.25

Nature 513, 375–381 (18 September 2014)

2014年9月18日発刊の、英国科学雑誌 Nature(International weekly journal of science)に、二階堂雅人助教、西原秀典助教(生体システム専攻)、岡田典弘名誉教授等の論文「The genomic substrate for adaptive radiation in African cichlid fish(ゲノム進化:魚類アフリカンシクリッドの適応放散に関わるゲノム基質)」が掲載されました。


東アフリカ産のシクリッド5種の全ゲノム配列の決定
-大規模な適応放散を可能にしたゲノム基盤-

概要

東アフリカの三大湖(ビクトリア湖、マラウィ湖、タンガニィカ湖)に生息するシクリッドは大規模な適応放散や平行進化の好例として生物学的に極めて重要なグループであることが知られています。今回、東工大を含めた米国Broad Instituteを中心とする国際研究チームは、生物の形態的・生態的な多様性創出を可能にした分子レベルでのメカニズムを探る目的で、東アフリカ三大湖およびその周辺河川に生息するシクリッド計5種の全ゲノム配列とトランスクリプトームの決定と比較をおこないました。その結果、三大湖に生息するシクリッドのゲノムにおいては、河川に生息する祖先種と比較して、遺伝子重複や遺伝子コード領域におけるDNA配列の多様化、転移因子挿入に伴う遺伝子発現の多様化が顕著であることが分かりました。さらに重要な事として、適応放散を起こす前の祖先集団中のゲノムに存在していた多型(standing variation)が、その後の急速な多様化や平行進化に大きく寄与した可能性を強く示唆しました。今後は、本研究によって明らかにされたDNAの違いが実際に形態の多様化に関わっているのか、そしてそのDNAの違いに自然選択は働いたのかを実験的に検証していくことになります。我々のグループはシクリッドゲノム中に存在する散在性転移因子や、多重遺伝子族を形成している嗅覚受容体遺伝子群の網羅的な単離とその構成を明らかにすることで、この研究に貢献しました。

本研究に参画した日本の研究グループ

二階堂雅人(東工大・助教)
西原秀典(東工大・助教)
岡田典弘(台湾成功大・東工大名誉教授)

発表雑誌

雑誌名:
Nature 513, 375–381 (18 September 2014)
論文タイトル:
The genomic substrate for adaptive radiation in African cichlid fish
著者:
Brawand D et al., Nikaido M (75人中45番目), Nishihara H (75人中46番目), Okada N (75人中64番目)
DOI番号:
10.1038/nature13726


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